幕末維新期の懐徳堂教授・並河寒泉について、これまで活用されなかった資料を用いて、主に次のことを明らかにした。①寒泉が「文久の修陵」という歴史的かつ政治的に重要な意義をもつ事業に関与したこと。②幕府と密接な関係を保ちながら、一方で水戸学に傾倒していたことにより、思想的政治的には幕府と朝廷との間で苦しい立場にあったこと。 泊園書院の藤澤東ガイ・南岳については、中国の儒学と日本の尊王思想とを融合させ、その経学が近代国民国家に理論的基礎を与えるものであったことを明らかにした。全体として、懐徳堂と泊園書院とを比較対照することで、変革期の大坂漢学を統一的に把握する新たな視点を提示できた。
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