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2011 年度 実績報告書

中国イスラーム「道学」思想の発展とジャーミー思想の思想系譜学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 22520086
研究機関聖トマス大學

研究代表者

松本 耿郎  聖トマス大學, 人間文化共生学部, 教授 (00159154)

キーワード相近の理 / 礼乗 / 道乗 / 真乗 / 全人 / fana / qalb salim / walayah
研究概要

今年度は中国イスラーム経堂教育の「道学」の教育目標、その到達目標を明らかにするために、その学習および修行過程の模範が記してあると考えられる馬復初の『漢訳道行窮竟』を詳細に分析し、その原本であるアジーズ・ナサフィーのMaqsad-eAqsaとの対比研究を中心に研究を進めた。『漢訳道行窮竟』は二つの巻から成り立っている書物である。第一の巻がアジーズ・ナサフィーのMaqsad-e Aqsaの翻訳になっている。馬復初はこの翻訳のなかで儒教的な言葉をちりばめながら、人間が礼乗の人からはじまり道乗の人にいたり、次いで真乗の人にたどりつく道程を説き明かし、最終的に全人という完成された人間に到達することを説明している。これは霊魂の浄化の修行を実践し最終的にfana'(自我消滅)に到達するスーフィーの修行と対応している。第二の巻は劉智の『天方性理』に示される世界生成と人間形成の理論を縮約して紹介し、この世界内で人間が占める位置および果たすべき役割を説明している。この研究を通じて中国イスラームの伝統的経堂教育が西アジアイスラーム世界のスーフィズムに強く影響されていることが明らかになった。ただし、イランへの調査旅行で伝統的なイスラーム神学校教育を受けたことがあるマシュハド自由大学のイスラーム学の教授ムハンマド・レザー・アターイー氏に経堂教育十三本経を検討してもらった結果、ペルシャ語世界にはそれの模範となるカリキュラムは存在せず、経堂教育の十三本経の起源が西アジアにはなく中国独自のものであるとの結論に到達した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

この一年ほどの間に中国国内情勢の影響で少数民族である回族にたいする締め付けが厳しくなり、これまで研究に協力してくれた回族の人々に迷惑をかけないようにするため、研究協力を得にくくなってきたため。

今後の研究の推進方策

少数民族にたいする監視が強化されてきた現在の中国においては現地調査をすることは危険がともなうので、現地調査よりも文献研究に重点を置くべきであろう。十三本経の最終巻であるジャーミーの"ash"at al-lama'at"を分析し、この書物の内容が「道学」の完成ということと如何なる関係を持っているのかを解明する方向で研究を進めるべきであると考えている。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] 馬徳新の『漢訳道行窮竟』とアジーズ・ナサフィーの"Maqsad-e Aqsa"ni(最遠の目的地)に関する一考察2012

    • 著者名/発表者名
      松本耿郎
    • 雑誌名

      聖トマス大學論叢『サピエンチア』

      巻: 第46号 ページ: 1-24

    • 査読あり
  • [学会発表] 馬復初における儒教とイスラーム2012

    • 著者名/発表者名
      松本耿郎
    • 学会等名
      「<文明の衝突>から<文明の対話へ>-諸宗教間の相互理解の為の哲学的理論構築の試み」の研究会
    • 発表場所
      早稲田大学商学学術院
    • 年月日
      2012-03-21

URL: 

公開日: 2013-06-26  

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