本研究の目的は「住む」という事柄を、おもに20世紀初頭のドイツ文化を概観することによって、新歴史主義的に解明することである。いっそう具体的には、本件は哲学と建築との学際的研究なのであって、このような研究は現在もなされていないようだ。こういうことから、われわれはまず、国際的な住宅展(あの有名なヴァイセンホーフ・ジードルング)で「新たな住むこと」についてそれぞれ独自な見解を表明したミース・ファン・デル・ローエ、ル・コルビュジエ、ヴァルター・グロピウス、ハンス・シャローンといった、主要なモダニズム建築家について比較考察をおこなった。つぎにわれわれは、前世紀を代表する哲学者の一人であるマルティン・ハイデッガーを研究したが、そのハイデッガーは『建てること、住むこと、考えること』のなかで、われわれは住むことを学ばなければならないと強調したのだった。そしてわれわれは最後に、ハイデッガー居住論とモダニズム建築とを比較しつつ、現代社会にとって住むことの新たな可能性を見いだすべく努めた。
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