1.ファシズムの美学思想に関する資料収集と研究 アルフレート・ポイムラーに関する文献資料を収集してその思想を研究し、その研究成果を第60回美学会全国大会にて発表した。(発表題目:ゴットフリート・ベンとアルフレート・ボイムラー-神話的芸術観とナチズム-)また、2月にベルリンで開催された「ヒトラーとドイツの人々」展を訪れ、ファシズムのイメージ形成とその背景にあった社会的条件についての調査を行った。また、同地にて同展カタログを始め、多くの文献を収集した。 2.ファシスト・モダニズムに関する資料収集と分析 ゴットフリート・ベンのほかホフマンスタール、エルンスト・.ユンガーに関する文献資料を収集した。ベンに関しては上記学会にて研究成果報告を行った。ホフマンスタール、ユンガーに関する研究は現在進行中であり、その成果は近日論文として発表する予定である。 3.現代における芸術と政治の連関に関する調査・研究 近年制作された日本の戦争映画の表象とその背景にある政治的言説との関係についてまとめ、22年8月北京大学で開催された国際美学会にてJapanese war films and recent political discourse in Japanというタイトルの発表を行った。また、ベルリンに点在する記憶芸術の作品について研究し、同年10月の第5回表象文化論学会(於東京大学)にて発表を行った。(題目:〈場所〉と記憶-記憶芸術(Gedachtnis-Kunst)の場所をめぐって-)また、政治と芸術というテーマに関わる複数のシンポジウムに参加し、情報収集を行った。 以上の研究を通しで、「神話的芸術観」という観点からファシスト・モダニズムにおける政治と美学の相互浸透の一端を解明することができた。また、現代の表象における政治と美学の浸透の例について見解を示すことができた。
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