初年度は研究代表の交代があったものの前代表者藤曲隆哉は研究協力者として課題研究に協力し、調査及び資料収集にあたった。 初年度調査予定の高村光雲(1852~1934)、関野聖雲(1889~1947)の彫刻道具の調査は新たな調査対象の所在も明らかとなり、長野県・前田純一氏の所有する関野聖雲《彫刻道具》の調査、朝倉彫塑館、朝倉文夫(1883~1964)《彫刻道具》の調査を行った。また、そこから彫刻家関野聖雲と木工家前田南斎の交流も新たな発見となった。朝倉の道具は千代鶴是秀(1874~1953)の作であり木工具の中でも美術的鑑賞に堪えうる資料である。それらの採寸と写真撮影等の資料収集を行った。 また、同時に対象作家の作品の調査も行い、それらから得られる彫刻面の切削痕等をもとに、実際に作家が行っていた道具の使用方法を検証した。調査対象作品は高村光雲《観音像木型》(東京芸術大学蔵)、関野聖雲《吉祥天像》等の作品を対象とした。 初年度の成果としては当初より予測していた彫刻家と刀鍛冶との交流の深さやそこから彫刻道具が実用を兼ねた工芸品との位置づけを示唆させる上での貴重な資料の収集を得ることができた。 申請前に行っていた事前調査で得られたデータと今回の調査で得られた情報を整理し、調査対象の道具の作図も今後行っていく。
|