研究概要 |
本研究計画は,新印象派の画家スーラのオリジナルの額縁=「フレーム」と,画家が作品の周りに施した点描による縁取り=「ボーダー」を調査し,その結果の分析を通して,19世紀末における表象のあり方を明らかにしようとするものである.そのためにまず,作品を実際に見て,複写図版では確認の難しいボーダーの点描と額縁の色と点描の関係を調査することが必要となる.今年度はその第一段階として,2011年3月にオランダ,フランス,イギリスを訪問した. スーラの代表作は大画面絵画が6点,点描を用いた完成作が約25点である.今回の調査ではそのうち,オランダにある《シャユ踊り》とロンドンの《アニエールの水浴》の大作2点,完成作としてはロンドンの《化粧する女》の他海景画など計8点,ボーダーのある習作3点を調査し,撮影が可能なものについては細部写真を撮った.(なお,クレラー・ミュラー美術館所蔵の海景画完成作1点については福岡で開催されたゴッホ展で調査した).これらの調査に基づき,下地と「ボーダー」との関係の制作時期による相違およびその推移について,実見に基づく確認結果をまとめている.ただし,研究結果を公にするには主要な作品が調査対象からかなり欠落しているため,アメリカ合衆国での調査が待たれる.この調査は,平成23年度夏期に実施の計画をしている.
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