平成24年度は、本調査を中心に行った。本調査を行った作例は、次のような観点で選定した:(1)各時代の武家肖像に大きな影響をあたえたと推定される将軍彫像、(2)特に、足利尊氏および徳川家康の肖像 本調査を行った作例は次の通りである:静岡・清見寺足利尊氏坐像、大分・安国寺足利尊氏坐像、静岡・東雲神社徳川家康坐像、鎌倉・長寿寺足利尊氏坐像、京都・南禅寺山門徳川家康坐像、同藤堂高虎坐像、愛知・長圓寺板倉勝重坐像 これらの作例についての主な成果は次のとおりである:①静岡・清見寺足利尊氏坐像は、表現・構造から南北朝時代から室町時代前期にかけての制作と判断され、最古級の尊氏像とみられること、②大分・安国寺足利尊氏坐像は清見寺を遡る制作と考えられ、現存最古の尊氏像である可能性が高い重要な像であること、構造から院派仏師の作と推定されることも注目すべきであること、③京都・南禅寺の徳川家康坐像と藤堂高虎坐像は、作風・構造から江戸初期の優作と判断され、以心崇伝の遺言によりその示寂間もない頃、すなわち寛永十年(一六三三)頃に七条仏所系統の仏師により制作されたと判断できること、④静岡・東雲神社徳川家康坐像、鎌倉・長寿寺足利尊氏坐像は、それぞれ江戸期における堅実な作例と判断できること、⑤ 愛知・長圓寺板倉勝重坐像は、やはり表現・構造から、本像を祀る肖影堂が建立された寛永七年(一六三〇)の制作と判断され、束帯形の肖像として入念な秀作とみられること
|