研究課題/領域番号 |
22520109
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
吉田 紀子 中央大学, 総合政策学部, 准教授 (20433873)
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キーワード | 美術史 / 芸術諸学 / 美学 / 西洋史 / ポスター / 広告 / 美術館 / フランス |
研究概要 |
広告ポスター専門の美術館を創設する計画は、フランスではすでに第三共和政下の1898年に美術批評家と美術行政官によって提案されていたが、第二次世界大戦後になって漸く文化政策の正式な課題として検討されるようになった。その結果、1978年にポスター美術館がパリに誕生し、1982年には広告美術館と改称された。本研究では言説資料を考察材料として、自国の広告表現の"高い芸術性"を誇る19世紀以来の価値観、すなわちフランスにおける「広告芸術論」が、美術館の開設を通して公認されるまでの理念上、制度上の展開を検証することが目的である。 研究2年目の本年度は、両大戦間期1920~1930年代のフランスにおいて産業芸術("産業に応用される芸術"を意味し、広告もこの範疇に分類される)を取り巻いていた社会文化的状況について検証し、これを論文としてとりまとめ公表した。また、1890年代に絵画と広告イメージの間にすでに造形上の交流が認められた点に着目し、試論として口頭発表を行った。 資料調査に関しては、平成23年8~9月にはフランス国立図書館、フランス文化省資料情報部等において海外調査を実施した。また日本国内における産業芸術の位置付けを検証するため、平成23年10月に三菱一号美術館(東京)「トゥールーズ=ロートレック展」、平成23年11月に神奈川県立近代美術館「シャルロット・ペリアンと日本展」を視察すると共に、各担当学芸員に対して聞き取り調査を行った。日本の事例との比較を通して、フランスの特殊性が一層明確になると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海外調査、および収集済み一次資料と関連研究書の精査はおおむね順調に進展している。本年度は当初、2回の海外調査を計画していたが、平成23年8月16日~9月13日の1回とし、ただし期間を3週間から4週間に延長して集約的に実施した。その結果、調査成果を本年度後半、平成24年1月31日の口頭発表へと結びつけることが可能となり、研究成果の一部公開が達成された。
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今後の研究の推進方策 |
来年度(平成24年度)は本研究計画最終年度に当たり、第二次世界大戦後、とりわけ1970~1980年代フランスの美術館政策に関して、フランス文化省資料情報部においてこれまで以上の綿密な調査が必要となる。現地当該機関の研究協力者と緊密に連携をとりながら、これを確実に遂行していきたい。
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