1978年のポスター美術館開館は、19世紀末に形成された「広告芸術論」がフランスにおけるポスター受容の基盤であり続けるという、いわば価値観の継承を制度的に決定付けるものであった。その広告美術館への改称は、芸術性の有無という評価の優先基準が1970~80年代に広告産業の成長に伴って相対化していく過程を反映していた。文化と芸術の概念を民主的に問い直しながらここに介入し、産業振興の目的をもってクリエーションとしての広告を支援したのが、1980年代社会党政権下の政府主導の文化政策であった。海外資料調査を中心とした本研究を通して以上の歴史的展開が明らかとなり、日仏両国において研究成果が公表された。
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