東京国立博物館が所蔵する『支那写真帖』は、中国の史跡、文物、風景写真を添付した写真帖であるが、目録には簡単な撮影地が記されているのみで、撮影者、撮影時期等が不明であった。近年の調査で、一部に茨城県天心記念五浦美術館が所蔵する早崎梗吉が撮影した原板と一致する写真が含まれていること、また関野貞の『支那仏教史蹟』に掲載される写真が含まれることが明らかとなった。 今年度はこのうち、関野貞が明治40~41年に行なった山東地方の調査に関わる写真に注目し、『支那写真帖』及び『支那仏教史蹟』に掲載される写真が撮影された場所の特定と調査の行程を追うため、2回にわたり山東省で現地調査を行なった。 第1回目は、泰山、岱廟、済寧文廟(現、済寧博物館)肥城県孝堂山石室、嘉祥県武氏石室、青州雲門山石窟、駝山石窟、この調査では、関野が考証した漢時代の石碑や画像石、北魏~唐時代の石窟を調査した。 第2回目は、曲阜を中心に孔廟、孔府、孔林、孟廟、孟府、孟林、この調査では、孔廟や孟廟など明~清時代の建築群と関野が撮影当時には孔廟にあった石碑群を漢魏碑刻陳列館で調査し、関野の建築や石刻史料考証の足跡を追った。
|