中国・日本に遺る五胡十六国時代に製作された所謂「古式金銅仏」の作例を約30点調査した。この古式金銅仏は、類型化が著しい小像であるが、それでも細部の形式や技法等の違いによって4つのタイプに分類できることが既に指摘されている。今回の調査ではこの4種の違いを確認するとともに、各グループに共通点が多く見られることも確認した。さらに、今回の調査では、この4分類以外の全く新しいタイプの作品も抽出できた。それは、高さが10cm以上ある大型の作品で、また台座部が低く、三日月型を呈する1群である。その代表は、西安市博物館蔵のソグド文字の銘を有する金銅坐仏である。これによって、五胡十六国時代に、西安周辺で新しいタイプの金銅仏が作られていたことが予想されるに至った。さらに、このタイプの金銅仏は、北魏前期の金銅仏とも共通する要素が見られ、今まで不明であった五胡十六国時代から北魏に至る金銅仏の変化を知る上での道筋が見えてきた。 また五胡期金銅仏の顔貌や衣文表現の観察から、ガンダーラ要素が強いものと中国的に変化したものとの2種があることも判明した。従来、仏像の中国化は、5世紀末からの北魏の漢化製作の影響を受けて本格化したとされるが、実際は5世紀の早い時期に、仏像の中国化という現象が金銅仏に見られるのではないかと予想された。この点については、今年度以降も重要な研究課題として、引き続き調査を進めてゆきたい。
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