• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2011 年度 実績報告書

純粋音楽の思想 -音楽美学者としてのヨーゼフ・マティーアス・ハウアー研究-

研究課題

研究課題/領域番号 22520121
研究機関岩手大学

研究代表者

木村 直弘  岩手大学, 教育学部, 教授 (40221923)

キーワード十二音遊戯 / ハウアー / ヘッセ / ガラス玉遊戯 / 結晶
研究概要

今年度は、東日本大震災の影響で、当初計画した通りの内容を実施することができなくなったため、最終年度の研究実施計画に立項されている、他の芸術諸分野とのハウアーの音楽思想との関連について考察した。同時代の文学には、ハウアーをモデルとした登場人物が配された、フランツ・ヴェルフェルの『鏡人 Spiegelmensch』(1920年)や『ヴェルディ Verdi』(1924年)、オットー・シュテッスルの『太陽の旋律 Sonnenmelodie』(1923年)、ヘルマン・ヘッセ『ガラス玉遊戯 Das Glasperlenspiel』(1943年)、トーマス・マン『ファウスト博士 Doktor Faustus』(1947年)などがあるが、特にヘッセの〈ガラス玉遊戯〉とハウアーの〈十二音遊戯〉との関連に着目し、当時の芸術におけるトポスとしての〈結晶〉という視点から、両者の共通点について考察した。まず、同時代の文学者パウル・シェーアバルトや建築家ブルーノ・タウト、あるいはハウアーと親交があった美術家ヨハネス・イッテンの思想に見られる〈ガラス〉や〈結晶〉の概念について整理し、ハウアーの純粋主義的傾向の淵源の一つを見いだした。
こうした視点をふまえて、ヘッセとハウアーを比較考察し、改めてヘッセの『ガラス玉遊戯』における〈ガラス玉遊戯〉の同時発生、音楽と数学・天文学の結合、諸「原則」の「発見」、古代中国思想への志向、そして、新しい学問としての音楽学(音楽理論)と瞑想の重視といった要素が、ハウアーの音楽思想と寸分違わず一致することを明らかにし、それがハウアーからの影響であることを証明することができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

東日本大震災が発生し、その対応のため、本務校(岩手大学)での研究環境を正常化するのにほぼ半年ほどかかった。よって、従来計画していた年度前半におけるヴィーンでの資料調査を行うことができなくなったため、当該年度の研究主題ではなく、当初最終年度に予定していた研究主題の一部である、ハウアーの〈十二音遊戯〉とヘッセの〈ガラス玉遊戯〉との比較を前倒しで取り上げた。

今後の研究の推進方策

震災の影響で、研究実施年度計画に変更が生じたが、平成23年度後半に本務校から短いサバティカル研修が与えられたため、ヴィーンでの資料調査には赴くことができた。平成24年度では、そこで収集した資料を分析し、これまで誰も言及してこなかったリヒャルト・フォン・クラーリクによるハウアーの音楽思想への影響関係について考察し、さらにそれをふまえ、ハウアーの「純粋音楽」という思想における古代ギリシャ思想や古代中国思想受容の全体像を明らかにする。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] <ガラス玉遊戯>と<十二音遊戯>-20世紀前半の芸術上のトポスとしての<結晶>をめぐって-2012

    • 著者名/発表者名
      木村直弘
    • 雑誌名

      岩手大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要

      巻: 11号 ページ: 31-69

URL: 

公開日: 2013-06-26  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi