本研究の目的は、大正・昭和の演劇界で形成された新しい劇理論が韓国の近代・現代劇成立にいかなる影響を及ぼしたかを明らかにすることである。平成24年度の研究は、全体的に大正・昭和の演劇運動が韓国近現代劇に与えた影響を中心に行った。 本年度には、日韓の影響関係を客観的に立証できる公演資料と新聞記事を中心に、資料収集と分析作業を行った。その結果、韓国近代演劇界の「翻訳劇と創作劇の論争」、「古典芸能に対する再認識」、「新派と新劇の影響関係」、「小劇場運動の成功と失敗」という特徴が、日本の近代劇理論から影響を受けていることが明らかになった。 「翻訳劇と創作劇の論争」は、翻訳劇の盲信論と効用論の対立から始まったが、結果的には新劇界の内部的な批判として発展した。この論争は日本でも韓国でも、過度に翻訳劇だけを重要視する傾向に対する問題提起としての意味が強かった。「古典芸能に対する再認識」は、歌舞伎俳優の価値を高く評価した日本の新劇理論が韓国演劇界にも影響を与えた。韓国でも古典仮面劇を、新しい価値がある劇様式として再認識するようになった。「新派と新劇の影響関係」は、韓国近代演劇界において未だに論争が進行している問題である。この問題を解決する概念は、日本における‘新劇の翻訳劇’と‘新派の翻案劇’というはっきりした区分であった。このような区分は韓国の新派と新劇論争を解決する重要な概念となった。「小劇場運動の成功と失敗」は、日韓近代劇の影響関係を明確に現す項目であった。韓国の近代知識人は日本式の小劇場運動が抱えている劇団運営と観客動員の構造的な問題を既に理解していたが、小劇場運動をそのまま受け入れて同じ失敗を繰り返した。このように韓国の近代・現代劇理論の成立においては、日本の演劇理論の影響が強かったことが明らかになった。
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