本研究ほ蝋型美術鋳造の技法研究を基に、鋳造による彫刻表現の可能性を追求していくものである。平成22年度はイタリアのローマ、ベローナ、フィレンツェ、ピエトラサンタの主要な鋳造所において実際に行われている鋳造法について調査をし、蝋およびブロンズ、鋳型材料の成分、鋳込み法、仕上げ法、等の調査を行い今後の研究を行う上での貴重な資料を収集することができた。 研究代表者である中村義孝はローマのカバラーリ鋳造所とベローナのファブリス・フォーラス鋳造所に自作の雌型を持ち込み蝋原形の制作を行った。その間、蝋張、湯道取り付け、鋳造、仕上げなどの現場に立ち会い、意見交換、資料収集をおこなった。カバラーリ鋳造所は1950~60年代、日本にイタリア式の蝋型鋳造が導入されたときに日本の彫刻家や鋳造家が多数関わった重要な鋳造所であり、ファブリス・フォーラス鋳造所もイタリア現代具象彫劇の巨匠クロチェティーが晩年よく通った鋳造所である。従って、これらの鋳造所の鋳造技法を明らかにすることは意義あることである。研究分担者の宮崎甲教授はフィレンツェのフェレデナンド・マリネッリとピエトラサンタのベルシリエセ、で調査を行うとともに、カッラーラのアカデミアにおいてブロンズ作品作りの授業にも参加し、原型づくり、型作り、鋳込みを体験し、鋳造技術の相互交流を行った。また、それらの鋳造の現場で日本では使用されていない型取り用シリコンゴムに注目し、調査を行った。この材料を使用することによって型取り作業の合理化を図ることや、新たな表現の可能性を模索することができると考えられる。 また現地調査と併行して各研究機関においてブロンズ鋳造による彫刻表現の可能性について、実制作を通しての検証を行った。
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