研究課題/領域番号 |
22520126
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
中村 義孝 筑波大学, 芸術系, 教授 (10198252)
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研究分担者 |
松尾 大介 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (50377230)
宮崎 甲 千葉大学, 教育学部, 教授 (60272291)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 彫刻表現 / 蝋型美術鋳造 / イタリア / ブロンズ |
研究概要 |
本研究は蝋型美術鋳造の技法研究を基に、鋳造による彫刻表現の可能性を追求していくものである。平成24年度は、昨年に引き続き研究代表者である中村義孝が、イタリアのローマにあるカバラーリ鋳造所において実際に行われている鋳造法について調査をおこなった。その間、自作の雌型を持ち込み蝋原型の制作及び、蝋板による直造りによる制作を行い、蝋直造りに適した蝋の配合について職人と意見交換を行った。カバラーリ鋳造所での調査をもとにアジア鋳造技術史学会誌FUSUS5号(2013年1月発行)に論文「イタリア蝋型美術鋳造法の国内導入におけるカバラーリ鋳造所の意義について」を発表した。また蝋型鋳造による新しい彫刻表現についての実制作を通した取り組みとしては、発泡スチロールを心材として板状の蝋をその上に重ねて形作る蝋直造り法に取り組んだ。完成した作品は第58回一陽展(2012年10月/国立新美術館)に発表した。研究分担者宮崎甲は、型取り法の簡素化をはかり、塑造やウレタンによる様々な形態の制作とその型取りを積極的に行った。そこから得られた精緻な形態を蝋に替え、それらをパーツとして鉄ベラで溶着しながら原型を制作した。この作品は日本基礎造形学会(2012年8月/九州産業大学)に発表した。松尾大介はブロンズと石、木、鉄等の異素材とを鋳造後に組み合わせる従来の方法ではなく、蝋原型の制作から鋳込みまでのイタリア式蝋型鋳造固有のプロセスを経ることで得られる異素材結合方法を制作を通して実証した。成果物としての作品は第35回国画会彫刻部秋季展(2012年10月/東京都美術館)で発表した。2012年11月に研究例会を筑波大学芸術系棟で開催し、中村、宮崎、松尾がそれぞれの研究について発表を行った。筑波大、千葉大、上越教育大、山梨大の教員・学生約50名が参加し発表に対する質疑や活発な意見交換が行われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね計画通りにイタリアの鋳造所において、自作を持ち込みそれを鋳造することで実際の技法と材料についての調査が行われた。現代におけるイタリアの蝋型美術鋳造法の一部が明らかになるとともに、それらの日本における導入の経緯などについても調査が進んだ。また調査に基づき学会誌に論文としてまとめ発表するなどの成果もあげている。またこれらの調査を踏まえ制作者の立場からイタリア式蝋型鋳造彫刻の特質を生かした表現についても、分担研究者それぞれの立場から実制作を通して考察し、作品として結実している。また研究例会を通して、蝋型鋳造による彫刻表現の研究におけるネットワークが構築されつつある。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年においては、研究分担者がそれぞれに設定した課題に基づき、イタリア式蝋型美術鋳造の表現の可能性について、実制作を通した検証をさらに深化させていく。また昨年度おこなった研究例会をさらに拡大し、ブロンズ鋳造彫刻の研究者に呼びかけ例会に参加してもらう。そして研究のネットワークをさらに拡張していくことを目指す。最終年度(平成26年度)には研究成果として生み出された作品の一般公開を美術館等で行うことを計画している。また作品の一般公開時に併せて研究の成果を発表する機会を設け資料として印刷物の作成と配布も計画している。
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