研究課題/領域番号 |
22520127
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
江藤 光紀 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (10348451)
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研究分担者 |
城多 努 広島市立大学, 国際学部, 准教授 (30423966)
辻 英史 法政大学, 人間環境学部, 講師 (80422369)
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キーワード | 歌劇場 / 文化政策 / 公共政策 / ドイツ / オペラ |
研究概要 |
23年度はまず22年度末に行った現地調査(ドイツ舞台協会、ザールラント州立劇場、フライブルク劇場)によりもちかえった資料を検討することから始め、ドイツ舞台協会の統計資料の意義と問題点について江藤・城多・辻による共著論文を執筆した。また残る二つの劇場についての分析もほぼまとまり、若干の追加調査を行ったうえで近々論文として発表する予定である。それとは別に現在は23年度末に行ったさらなる調査(リューベック劇場、リューネブルク劇場、デッサウ・アンハルト劇場)により持ち帰った資料の分析に取り掛かっている。 これまで調査した劇場は今のところ中小規模であるが、すべて異なる州から選択され、国境付近・国内奥部と多様な場所に位置し、旧西/旧東ドイツ圏の双方にまたがっている。サンプル数はまだ十分ではないが、各劇場の支配人や管理部門の長など劇場運営の要職にある人々への2年にわたる調査により、次第にドイツの歌劇場の置かれている環境が明らかになってきた。 共通する特性としては、運営者には地元/広域両方向への目配りが欠かせないということである。地元に対しては身近な場所で文化を享受できる利点を打ち出し、政治家の理解を得て、補助金の獲得につなげるという目的がある。また娯楽が多様化する中、若年層を育てるために教育プログラムへの取り組みも熱心に行われている。広域に対しては斬新な演出や演目、大掛かりなプロジェクトなどを企画して、国内におけるプレゼンスを発揮するという目的がある。多かれ少なかれ各劇場はこの双方を視野に入れている。そうはいっても、その実際は財務においては州や市の財政に強く左右され、また企画面においては、それぞれの場所の歴史性や支配人の問題意識によって異なるため、きわめて多様である。 本年度はこれらの分析をさらに継続するとともに、最終年度として大型劇場の分析も行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
9.の項で書いた通り、持ち帰った資料の分析などに若干時間がかかっている面はあるとはいえ、劇場の調査自体はほぼ当初の計画通りに進んでいる。また調査サンプルが増えるにつれて、調査のポイントなども明確化されてきている。
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今後の研究の推進方策 |
24年度は23年度に持ち帰った3劇場分の資料の分析から始めたい。また、22年度に調査した劇場についても、HPやメールインタビューなどを通じて、最新の情報を収集する。 一方、24年度は最終年度なので、サンプルとする調査対象として、この2年間の成果を踏まえたうえで、大劇場を選択する予定である。世界的な名声を博しているドイツの大都市の劇場は、予算規模、人数、公演内容ともに、これまで扱った劇場とは一回りも二回りも大きい。こうしたものについては、これまでのケースとどのような違いがあり、どのような特性をもっているかを明らかにする。
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