今回の研究の主たる目的は、1)楽器の音を含めた適切な保存方法の提示、2)音のデータベース(以下DB)化の検討及びその手法の整理とし、今年度はデータ項目を整理・確定し、今後各種の楽器研究に資するDBとしての枠組みを構築することを目的とした。 従来の楽器の調査における、法量の測定が基本となるため、先行研究を例にデータ項目を確定した。昨年度の進展を踏まえて、楽器の種類を琵琶に絞り検討した。従って、琵琶に関しては必要データ項目が揃い、今後データを収集していくことで、DBが完成することとなる。しかしながら、実際にこのデータ項目を汎用的に使用しようとする場合には、各楽器の形状により、データ項目が異なることが判明し、その部分を統合するか、別途記載項目とするかの検討が必要となった。従って、DBの構築方法としては、各楽器において項目を設定し、楽器単体ごとにユニークなキー項目を作成し、リレーショナルDBを作成することが運用においては現実的だと考えられる。 音声データの取得に関しては、単独でデータを収集する場合には、同じ機材を使うため条件はそろってくるが、実際問題としては、音響の異なる部屋で異なる機材を使用して録音され、また同じ開放弦を発音するにしても、弾き手による相違が出てくるため、各楽器間の音を収録し、単純に比較することはかなり困難なことであることも判明した。しかし、精密な比較は不可能であるが、楽器本体と音との関係性を明らかにするためにも、音声のデータ取得は重要であり、今後は複数の取得方法による音声もデータベース項目に入れることも考慮にいれ、さらに研究を進めていくこととする。
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