研究課題/領域番号 |
22520137
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
影山 純夫 神戸大学, 大学院・国際文化学研究科, 教授 (30144900)
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キーワード | 近世文人 / 篆刻 / 文人画 / 煎茶 / 漢詩文 |
研究概要 |
本年は、文人の活動の内篆刻の調査にかなりの時間を割いた。日本において篆刻は、書の制作の一部として考えられがちであったが、中国では西冷印社の存在からもわかるように、重要な芸術分野として考えられてきた。日本でも文人達は篆刻に芸術性を認め自らも篆刻を行うとともに、篆刻の専門家を尊敬し自らの印の制作を依頼した。それは小石元瑞が用いた大量の印の存在によってもわかるし、本年度収集した頼山陽や田能村竹田、谷文晃の印譜によってもわかる.篆刻家としては細川林谷、広江殿峯・広江秋水親子の活動を調べることで、文人間の繋がりや様々な芸術活動への参加も明らかになりつつある。 江戸時代後期の京都においては医者であり書画や漢詩文の作者でもあった小石元瑞が文人達のパトロン的な働きをなした中心的存在として考えてきたが、頼山陽を地方の文人交友の中心にいると考えることにより、京大阪と中国、四国、九州の文人との強い交友関係を明らかにできると考えるようになった。結果として、大分の雲華、下関の渡邉東阜などの芸術活動についても光を当てることになった。特に雲華については、浄土真宗の僧侶としての立場が強く意識されていたために、その絵画や書については近年ほとんど顧みられることがなかったが、茶の湯や煎茶、また琴や愛蘭など文人の多方面での活躍を具現しているのであり、今後研究対象として再認識されるはずである。また、今年度の調査によって、地方の文人のパトロン的な存在が明らかになりつつあるが、そのパトロンを中心に文人の関係を捉えることによって、西に地本における文人の相関図を描くことが可能になると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定していた文人資料の調査が、所有者の他界により進まなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
予定していた文人資料の調査が一部不可能にはなったが、本年度の調査により新たな文人資料の発掘があったので、おおよそ研究の目標は達成できると考えている。
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