研究課題/領域番号 |
22520147
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研究機関 | 聖徳大学 |
研究代表者 |
高松 晃子 聖徳大学, 音楽学部, 教授 (20236350)
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キーワード | バラッド / 音楽 / 録音 / 伝承 / 英語圏 |
研究概要 |
英語圏で伝承される物語歌バラッドは、口頭文化から録音文化へ移行しつつあり、その過程で、録音が新たな伝承の源となっている。本研究は、録音文化におけるバラッドの歌詞と旋律が、どのような形に収斂または拡散する傾向にあるのかを明らかにするものである。本研究全体の計画は、チャイルド・バラッド(全305曲)から、演奏頻度の高い20タイトルを対象曲として選定→それぞれについて録音資料を収集、録音リストを作成→各タイトルのそれぞれの演奏ヴァリアントについて、歌詞と音楽の傾向を調査→録音版が新たな伝承を生む現状を踏まえ、録音版と口頭伝承版の接続可能性について考察、提言、という流れになっている。 23年度末までに、対象曲の選定、20タイトルの録音資料の収集とリストの作成、ヴァリアントの多い12タイトルについて歌詞と旋律の分析を行った。 歌詞と旋律の分析を通じて、録音文化の特徴として以下のことが明らかになった。 1.バラッドが録音として記録されるジャンルの細分化とや同化が見られる。2.録音文化においては、ある特定の演奏が正典化される傾向がある→それにより、地域やジャンルを越えた伝達がますます盛んになる。3.音楽表現に助けられて整合性のとれた説明的な語りが展開される。4.バラッドにおいて反復の処理が課題となる。また、5.これらの録音がWEBを通じて全世界的に共有されることにより、バラッドという芸能の地域性と演奏する人のアイデンティティが曖昧になったり再構築されたりすることがわかってきた。 最終年度の25年度には、残りのタイトル(ヴァリアントはそう多くない)の分析をすませ、ポピュラー化した「伝統」が録音文化を通じてどのように共有されたり差別化されたりするのかを考えていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
半年に1回発表の場を設け、それを目標にある程度ペースを作ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究対象の収集はほぼ終わっており、分析のための項目とフォーマットも定めているので、残りの分析はほぼ機械的に行うことができる。 研究計画を変更する必要性はいまのところないが、今後データのより効率的な保存と共有の方法を検討する必要があるかもしれない。 今年度は口頭発表を中心に成果発表を行ったので、来年度は9月のシンポジウムをステップとして論文をまとめることを目標とする。
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