研究課題/領域番号 |
22520149
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
石井 明 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (00317273)
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キーワード | バロック音楽 / ヨハン・ヤコプ・フローベルガー / ベルリン / ヨハン・ゼバスティアン・バッハ / 鍵盤音楽 / ジローラモ・フレスコバルディ / ゲオルク・フィリップ・テレマン / 受容史 |
研究概要 |
本研究は、18世紀後半、ベルリンで複写された、16・17世紀に作曲された対位法が用いられた音楽作品を収めた写譜と、これらを書いた写譜師を研究対象とし、彼らの活動を明らかにすることで、ベルリンで活躍したエマニュエル・バッハなどの音楽家たちが抱いていた、過去の音楽に対する関心について具体的に把握し、さらには、ベルリンでの過去の音楽に対する探求がその後どのように音楽の歴史に影響し貢献していったのかということを明らかにすることを目的としている。 平成23年度は、平成22年度の研究において焦点を当てた6名の写譜師の活動を、さらに把握することに努めた。18世紀半ばから18世紀末までの間に、ベルリンで写譜された楽譜の多くは、現在、ベルリン州立図書館に保存されていることから、昨年度に引き続きここで現地調査を行った。調査の内容は、関連する、18世紀後期に写譜された楽譜の内容の検証、写譜師の筆跡の鑑定、使われた紙の透かしの判別などであった。今年度は特に、ゲオルク・フィリップ・テレマンによる、対位法が用いられた作品の写譜について検証を行った。これらの写譜の成立年代、写譜師の特定、そしてそれら楽譜間の関係などについて考察した。フローベルガーやフレスコバルディによって、17世紀に書かれた音楽作品を複写した写譜師たちは、バッハ以外の北ドイツの主要作曲家によって18世紀前半に書かれた対位法を用いた音楽作品も書き写していたことが判明した。そして、テレマンは、エマニュエル・バッハと親密な関係があったことから、18世紀後期のベルリン写譜師によるテレマン写譜の存在は、ベルリンの音楽文化活動の中における、エマニュエル・バッハの存在の重要性を明確に示しているという結論に至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、17世紀に書かれた音楽作品ではなく、18世紀前期の作曲家による対位法が用いられた作品の写譜についての調査を行うことができた。これは今年度の予定に沿った研究活動である。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度も引き続き、ベルリン州立図書館で調査を続行する。24年度は、この研究の中で重要な位置を占める作曲家である、ヨハン・ゼバスティアン・バッハの作品に注目する。バッハの息子のエマニュエル・バッハが、ベルリンの音楽文化活動の中で重要な役割を担っており、その活動の一環が父親の音楽の普及であったということを探求していく。
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