主に全体の交付額が申請額を下回ったことによる若干の変更などはあったものの、当初の予定をほぼこなすことができた。本年度の成果は以下の通り。 ・まずは最重要課題であった「基本資料の収集」を遂行した。書籍、CDを中心にして研究の基礎となる資料のおよそ半数をそろえることができたが、初年度を通してこれらの消化、吸収に努めた。この第一段階の成果として、日本音楽学会第61回全国大会におけるパネル・ディスカッション「21世紀のテクノロジーと音楽空間」で研究発表を行ない、マルク・バティエほか、最先端の研究者と議論を交わすことができた。 ・3年間の研究において使用する基本機材をほぼ全て購入することができた。 ・海外出張ではオーストリア、リンツのArs Electronicaフェスティバルに参加し、ディレクターのゲルハルト・ストッカー氏、および複数のアーティストにインタビューを実施した。さらにウィーンのメディア・アート状況の調査を行なった。このうちリンツの状況に関しては、日本アルバン・ベルク協会の機関誌「ベルク通信」にて報告した。 ・国内のスタジオ訪問では、予算の都合から山口とIAMASは断念し、まずは仙台のメディアテークでインタビューを行ない、さらに京都の立命館大学を訪問して研究者との意見交換を行なった。山口、IAMASは次年度に訪問予定である。 ・また、メディア・アート研究の側面を十分に加味しながら21世紀初頭の10年間にわたる日本の作曲界を概観し、共著『日本の作曲2000-2009』を出版した。 ・また、2011年1月28日には埼玉県立近代美術館においてシンポジウム「音楽という表現の拡がりとともに」に参加し、伊藤俊治ほかの学者、作曲家とともに、音楽とテクノロジーに関する公開の議論を行なった。
|