オーストラリア先住民演劇の中でも、特にミュージカルのジャンルで重要な作品、Tony Briggs作のThe Sapphiresを取り上げ、実践的調査を伴った研究を行った。 まず予備調査として、収集した文献を用いて、作品のバックグラウンドになっているヴィクトリア州・ニューサウスウェールズ州境のクメラグンジャ居留地と、ヨルタ・ヨルタの人々の歴史と文化、彼らのアイデンティティと芸術・エンターテイメントとの関わりについて明らかにした。その上で、研究代表者の翻訳により、日本で初めてとなる上演を行った。公演に伴って、『歌うこと、芝居をすることの意味:『ザ・サファイアーズ』のバックグラウンド』と題して講演を行い、その内容は今後論文化の予定である。 また、予備調査の内容は、講演「オーストラリアのミュージカルへの招待」(日豪合同セミナー)の中で公表した。さらに、オーストラリア本国で映画化された映画版The Sapphiresが、舞台版の日本初演と同時期に日本公開されたのに併せて、映画の一般観客に向けて、前述の調査内容を元にした論考を劇場用冊子に寄稿した。このように、一連の研究成果について、社会への幅広い公開を行った。 オーストラリア先住民のミュージカル舞台・および映画についての研究自体、日本で論考されるのは初めてであり、さらに舞台を日本で実験的に初演し、出演者・観客と討論の場を設けることが出来たのは画期的であった。 その他では、研究成果の公開として、前年度の成果にさらなる論考と分析を加えた講演「『ナパジ・ナパジ』と現代オーストラリア演劇―核・民族・ストーリーテリング」(世田谷パブリックシアター+国際演劇協会)を行った。
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