最終年度は多くの時間を論文執筆に費やした。 6月にannual reviewのために渡英した後、7月にロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校芸術学部演劇学大学院に、博士論文の一部として約一万語の論文を提出して受理される。その後、8月末から9月初めにかけて再び渡英し、ワイルズ博士の助言を得て論文に修正を加え、また、中国のシェイクスピア受容に関する資料も読み直しながら、全体の構成を考え直した。10月には鳥取県の「とりの演劇祭」に参加した韓国の劇団によるシェイクスピアの翻案劇を2つ取材し、論文の次の章を練った。 また、宮古島在住の沖縄研究家、大嶺かよ氏の協力を得、乙姫劇団による「琉球歌劇・夏の夜の夢」の1960年の台本と1990年の公演の映像記録を照らし合わせる作業をおこない、DVDの編集も行った。 さらに、羽衣国際大学日本文化研究センターの客員研究員として、「能マクベス」の英訳の改定版に取り組む準備をし、毛利三彌氏が代表を務める国立高等研究所の古典芸能の近代化に関するプロジェクトにもオブザーバーとして参加した。 3月には、大城立裕氏の新作組踊「聞得大君誕生」の公演(東京の国立劇場と国立劇場おきなわの共催)を取材し、歌舞伎の女形の坂東玉三郎氏と、沖縄の若手・中堅の役者・舞踊家とのリハーサルを見学した上、リリカフェのメンバーに沖縄演劇の解説を行い、それをもとに、英国のケンブリッジ出版から出る本に収録予定の沖縄演劇に関する英文記事を執筆した。さらに、乙姫劇団の後身である「劇団うない」の公演を取材をし、沖縄芝居への考察を深めた。
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