本年度は高齢者の芸術活動について、これまでの調査・研究と芸術の実践との間の往復的方法から導き出された研究成果のとりまとめとそれに伴う報告書の作成を主におこなった。また、造形と他領域の芸術活動を組み合わせた芸術プログラムも創出し、民家を活用した通所高齢者福祉施設「H」、地域の高齢者対象に福祉事業をおこなっているS老人福祉センター、福祉のコミュニティ作りを目指すS社会福祉協議会において実践し、芸術活動における自己表現の状態やその効果、国内の学校の美術科の題材についての研究をした。 上記研究成果のとりまとめ、具体的には、国内外の福祉の場でおこなわれている高齢者の芸術活動の内容を改善したものや本研究の芸術プログラムの実践による高齢者の作品、映像記録、語り、アンケート、バイタルサイン等の分析と高齢者の多様な生活史、環境、人生観や人間関係とも比較しながら、高齢者の芸術表現における自己表現の意味、その特徴、芸術の有効性ついて研究した。そして、高齢者の自己表現を可能とする芸術活動は高齢者の心身に有効に働くだけではなく、日ごろ見られない能力を表出させ、そのことが高齢者の生きる自信や能力の改善に繋がるということも明らかにした。以上の研究成果は報告書にまとめ勤務大学紀要『GENESIS』に発表した。 また、芸術活動の有効性、アクティビティ・サービスにおける高齢者の自己表現を可能とする芸術プログラムとその誘導方法、誘導する者の意識、芸術活動の有効性を生活介護にも発展させ「高齢者の芸術的ケアに関する研究―芸術の有効性の活用―」を京都老人福祉学会において発表した。 さらに本研究成果、高齢者の芸術活動の意義や重要性に関して、近畿の高齢者福祉施設や関西の芸術系教員養成課程をもつ大学、社会福祉士や介護福祉士等の福祉系職員養成課程をもつ大学及び、専門学校、そして地域の社会福祉機関、医療機関にウエブや文書で発信した。
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