本研究は、中国と日本における女性演劇の可能性を戯曲・話劇の両面から探るものである。2012年度は最終年度にあたり、これまでの研究をまとめることに力点を置いた。 戯曲ジャンルにおいては、中国第二の劇種と呼ばれる越劇を取り上げ、現在越劇界の第一人者である楊小青氏の新作品に描かれた女性像を精査分析した。具体的には2012年9月6日から16日まで中国杭州で行われた「楊小青演出作品シンポジウムと上演会」に参加した。楊小青演出の代表作である4作品(越劇『陸游と唐琬』『李慧娘』、昆劇『班昭』、京劇『将軍吟』)が上演され、9月15日に学術シンポジウムが開かれた。中山はここで「従昆劇『班昭』到越劇『班昭』」の発表を行った。同論文は『粉墨丹青』(中国戯劇出版社)に掲載され、浙江芸術職業学院学報2012.3にも転載された。 話劇ジャンルにおいては、中国学生演劇の著名指導者である桂迎教授(浙江大学)を講師に迎えて李六乙作『花木蘭』鑑賞会と座談会を神戸学院大学で開いた。男性作家李六乙の『花木蘭』と女性作家銭珏の『花木蘭』に描かれた女性形象の差について意見交換を行った。 前年度に行った「それでもワタシは空を見る」についての上海上演記録と座談会記録は「21世紀の女性演劇を求めて(3)」「同(4)」(神戸学院大学人文学部紀要33号)に発表した。その合間を埋める資料として研究成果報告書を作成し、「女性演劇座談会――女性演出家と女性学者との日中交流」記録、『それでもワタシは空を見る』中国語台本、李六乙作『花木蘭』日本語台本、中国演劇とジェンダーについての論文・劇評、所蔵中国戯曲映像資料目録などを掲載した。 予定していた越劇古典作品の翻訳および字幕入りDVDはまだ作成途中である。今後も中国文化を広める教材として完成に向けて尽力したい。
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