当研究は、第二次大戦後の占領期の連合国軍最高指令官最高司令部(以下GHQ)による歴史教育政策の調査、および当時国立博物館が果たした教育的役割の明確化が目的である。 初年度にGHQ文書内の博物館に関連する文書の資料選別、英単語検索ができるよう英文打ち込みが終了しており、本年度は文書の和訳、データベース化を行った。国会図書館所蔵のマイクロフィルム化された文書は、『国立国会図書館所蔵 GHQ/SCAP文書目録』しか手がかりがなく、撮影が甘いため、文字の判別がしにくい箇所が多く、専門用語も多いため、和訳が予定より時間を要した。しかし、一語一語適当だと思われる語句の検討をしたので、翻訳のレベルは高いものになったと自負する。最終年度には、東京国立博物館のウェブサイトにて、関連語句で検索できるシステムを備えた形式で、データ公開する予定である。合わせて和訳した資料を元に、占領期の歴史教育政策を丹念に確認し博物館が担った役割を分析する予定である。 本研究において、現代史(戦後史)、博物館史、教育史のいずれの学術分野においても評価が定まっていない占領期の国立博物館を重視する観点及び国立博物館の教育事業を複合的視点で考察することが特色である。そのため、本研究の研究成果は博物館史のみならず現代史(戦後史)、教育史と互換性を持つ、幅広い展開が見込まれる研究であり、国立博物館とGHQの関係を明確にすることは、東京国立博物館史研究においても新生面を開くものである。
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