本研究は、我が国における大衆読物の大きな特徴の一つである〈絵入本〉に注目して、幕末明治期における出版と享受との様相を明らかにするために、明治期の〈草双紙〉を中心とした戯作の網羅的書誌調査による書目を作成することが目的である。 既に、石川嚴『明治初期戯作年表』(從吾所好社、1927 年)や、山口武美『明治前期戯作本書目』(日本書誌学大系、青裳堂、1980 年)などの書目年表が編まれているが、残念ながら所在情報が記されていないために、その書誌記述を原本で確認するのに予想以上に時間と労力が掛かってしまった。また、残念ながら『国書総目録』には慶応三年以降の標目は登載されておらず、資料の所在を知り得るための手段が甚だ少ない。在外資料に関しても、草双紙については充分な書目は作成されていない。斯る状況の下で、国会図書館の近代文学ライブラリーで公開されている標目や、調査の及んだ個人蔵書だけでは、網羅的な書目を完成することは困難であった。 さらに、明治期草双紙の題材が新聞の「続き物」であることは指摘されているが、肝心の新聞紙をまとめて所蔵している機関がないために、実際に見て内容を確認するには更なる時間が必要であることが分かった。そこで、研究態勢を建て直すために研究終了一年前申請をした。幸い採択されたので、これからは、実見できなかった標目の扱い方を工夫した上で、さらに資料の博捜に努めて、少しでも充実した書目を作成すべく微力を尽くしたい。
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