平成24年度は、前年度に引き続き「時事新報」文化関係記事の目録作成と、それに関連する文学関係の研究を行い、また、その成果を基にシンポジウムを開催したことが研究実績として掲げられる。 研究の主眼である「時事新報」文化関係記事目録については、平成23年度に採録したデータをもとに検証を行い、研究代表者の杉山欣也が「「時事新報」文化関連記事目録 一九二七(昭和2)年二~三月」(『金沢大学歴史言語文化学系論集』2013.3発行)を発表した。また、将来的に本目録を出版する方向が定まった。さらに新聞による文学創造の研究に〈地方〉の観点が必要であることに気づき、例を秋田県にとって、地方における新聞と文学の関係を考察した。その結果は近く刊行される『東北近代文学事典』に収録予定である。 また、研究分担者の竹本寛秋は本研究において「大洗の山村暮鳥詩碑建立」(雑誌『雲』)、「山村暮鳥と石原純」(雑誌『雲』)を発表した。 さらに、他の科研費を受けた研究会と共催で、「『円本』、地域、文学」と題するシンポジウムを開催した(2013年3月24日、於・仙北市新潮社記念文学館)。これは、1927年前期における「時事新報」文化関係記事の大きな話題であった〈円本〉をテーマに、メディアによるその宣伝活動や地域読者の受け止め方、あるいは当時の出版における大きな問題である検閲の問題などについて4名のパネラーが報告と討議を行ったものである。ここで杉山は、「『現代日本文学全集』における伏字調査(中間報告)―円本と検閲をめぐって」というタイトルで発表を行い、その後のディスカッションにも参加した。このことは「秋田魁新報」2013年3月28日付朝刊に紹介された。また、会場である仙北市角館町の新潮社記念文学館からは、その内容に関してなにか企画を立てたいという連絡があるなど、反響を呼んでいる。
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