今年度は本研究の第1段階として、彦根藩井伊家の蔵書目録に関する史料の所在調査、並びにその複写物の収集に務めた。調査は彦根市立彦根城博物館、彦根市立図書館、滋賀県立図書館、国立国会図書館、国立公文書館、東京大学史料編纂所で実施した。調査の結果、彦根城博物館を中心に合計42点の史料(蔵書目録や書留など)の存在が確認できた。そこで、これらの史料の複写申請を所蔵機関に申請し、今年度中に井伊家の蔵書目録に関する史料をほぼ入手することができた。また、上記と並行して、井伊家の蔵書目録と比較検討するための史料として、近世の蔵書目録の複写物の収集も行なった。近世の蔵書目録では、井伊家の学問と深い関係があると推定される本居宣長(鈴屋)の学派の和学者の蔵書目録をはじめ、近世を代表する蔵書家の蔵書目録などを中心に収集した。次年度も近世の蔵書目録の収集は継続して行なう必要があるが、本年度に収集した史料で、当初申請した研究実施計画の通りに、第2段階、すなわち井伊家の蔵書目録に関する書誌学的分析を行なうための研究基盤が整ったといえる。
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