研究課題/領域番号 |
22520174
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
膽吹 覚 福井大学, 留学生センター, 准教授 (70362035)
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キーワード | 蔵書目録 / 彦根藩 / 井伊家 / 書誌学 / 蔵書史 / 文庫史 |
研究概要 |
本年度は昨年度に収集した彦根藩井伊家の蔵書目録並びに書留類の書誌学分析と国立国会図書館所蔵の彦根藩旧蔵本の調査を中心に行なった。また、彦根藩井伊家の蔵書目録の分析のために、近江国水口藩加藤家の蔵書目録の閲覧(予定にはなかったが、急遽甲賀市教育委員会の許可が得られたので)、並びに井伊家の学問と深い関係を有する和学者(本居派を中心に)、儒学者(古文辞学派を中心に)、兵学者の蔵書目録、更には比較対象可能な近世の蔵書目録の調査、及び複写可能なものはその複写物を収集した。 蔵書目録の分析は、まず目録に記載された書名について、『国書総目録』や『古典籍総合目録』などの目録類を使用して、その著者、ジャンルを調査し、目録に記載された蔵書にどのような傾向が認められるか、また、その書名リストの中に貴書珍本がないか精査した。そして、井伊家の学問-和学では本居派、儒学では古文辞学派と朱子学派、弓術書や馬術書などの兵術書-という視点からも分析を進めた。さらに藩主の著書などにも留意した。 上記の分析を終えた後、今回蒐集した目録類を国元の彦根の目録と彦根藩江戸藩邸の目録、そして上記2種のいずれか不明の目録、の3種類に分類した。そして、今回蒐集できた目録ごとに解題を記した。この解題は本研究の基幹部分であり、これができたことで本年度の研究目標は、ほぼ達成されたといってよいであろう。なお、井伊家の蔵書目録は『彦根藩文書調査報告書』にすでに掲出されているが、そこでは蔵書目録ごとに解題はなされていない。その点において今年度の研究は、先行研究を踏まえつつ、それを1歩前に進めることができたと言ってよいであろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
22年度に蒐集した蔵書目録を分析考察し、その結果を目録ごとに解題としてまとめることができた。これによって本研究の基幹部分はできたといってよい。
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今後の研究の推進方策 |
24年度は本研究の集大成として、蒐集した目録類から井伊家の蔵書の分類法、蔵書傾向、彦根と江戸藩邸との比較など、本年度の研究を踏まえて、井伊家の蔵書目録を総合的に研究する。また、23年度に同じく近江国の大名、水口藩主加藤家の蔵書目録を閲覧する機会に恵まれた。これは本研究申請時では予定されていなかったが、甲賀市教育委員会のご厚意によるものであり、嬉しい誤算というべきものである。このチャンスを活かすべく、24年度は水口藩加藤家の蔵書目録の調査を追加し、井伊家の蔵書目録の研究に役立てたい。そのために旅費として水口藩調査旅費を計上する。また、本研究の成果を年度末に報告書として1冊にまとめるために、本研究分野の先行論文集である『典籍関係雑誌叢書』と『書物関係雑誌叢書』を購入し、報告書作成の一助としたい。
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