本研究は、女性教育を〈知〉の継承という観点から捉え、社会文化史、政治思想史における「女訓」という歴史的視座の有効性を考えるとともに、明治期に行われた「女性教育の内実」と「教育という営為」を、天皇・皇后及びその側近、政府首脳、民間それぞれのありかたと、彼らが編纂した教材、読み物、表象等により明らかにすることをめざすものである。 最終年度にあたる平成25年度は、これまでの研究成果をふまえつつ、平成22年度「文部科学教育通信」(ジアース教育新社)に連載した「〈知〉の継承から考える明治期の女性教育 ― 先駆者の気概に学ぶ ―」に大幅な加筆を行い、『烈女伝 ―勇気をくれる明治の8人』として三弥井書店より刊行するに至った。 同書では、内容理解に役立つ約70点に及ぶ図版資料を掲載し、平易な表現を用いることで、若い世代にとっての読みやすさを心がけた。全223頁の内容は以下の通りである。 「偉人伝を超えて― はじめに」、第一章「学びたい!をあきらめない 東京女子師範学校第一回生 青山千世」、第二章「明治新政府にもの申す 皇后の家庭教師 若江薫子」、コラム①「女性と手紙 樋口一葉のかくれたベストセラー『通俗書簡文』」、第三章「近代女性の『鑑』となる 宮中のたましい 美子皇后」、第四章「学校経営に戦略を! 跡見女学校創設者 跡見花蹊」、コラム②「女訓書の系譜 秋篠宮紀子さんに贈られた『からすまる帖』」、第五章「荒くれ反骨男たちを鍛える 興志塾塾頭 高場乱」、第六章「殖産興業を担う 富岡製糸場工女 和田英」、コラム③「海外に紹介された少女 ちりめん本の世界」、第七章「日米文化の架け橋となる コロンビア大学講師 杉本鉞子」、第八章「大胆に率直に自己の意志を示す 初代婦人少年局長 山川菊栄」、「手渡されたメッセージ 結びにかえて」。
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