研究課題/領域番号 |
22520179
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研究機関 | 国際日本文化研究センター |
研究代表者 |
荒木 浩 国際日本文化研究センター, 研究部, 教授 (60193075)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 徒然草 / 禅 / 方丈記 / 随筆 / 古典の再構築 |
研究概要 |
(1)国文学研究資料館高乗勲文庫所蔵の『徒然草』関係資料の調査を継続して行うとともに、同館や国会図書館などを活用して、関連情報の収集と文献調査を行った。(2)『徒然草』の享受資料について分析を行った。(3)『徒然草』研究史に関する情報を整理した。(4)国際高等研究所において「『徒然草』と法語」と題する発表を行い、『徒然草』の時代、思想と享受の問題について、禅宗との関係を中心に考察した。関連する研究の一部を古代中世の日本文学史の一章として分担執筆したが、刊行は25年度である。(5)『徒然草』の個別章段について、注釈的読解を行った。特に(4)の発表に関連して、最重要章段である最終段の分析と情報整理を行った。(6)『徒然草』の古典化の問題と密接に関連する「随筆」概念について考察を進め、『方丈記』についても分析を継続した。成果は人間文化研究機構のシンポジウムや国文学研究資料館での特別展示「鴨長明とその時代 方丈記800年記念」への協力などの形で発表した。(8)26年刊行予定の編著論集「中世の随筆」の編集を開始した。随筆の総体的概念、『方丈記』、『徒然草』を中心とする作品論と位置付け、文学史、本文、享受、古典化の問題など、本研究課題関連の問題について、根本的な見直しを行う論集となる予定である。(9)昨年度中国人民大学で発表した内容の一部を活字化した。(10)『徒然草』や随筆と関連の深い説話について、説話文学会五十周年シンポジウムのパネリストとして発表した。(11)随筆に関する文学史的問題について、台湾大学で関連の講義を行ったほか、デンマークやアメリカでのワークショップ等に参加して、国際的な情報交流を行った。(12)『朝日新聞』の取材(大阪本社)や執筆(全国版ニュースの本棚)、またNHKラジオ深夜便の出演などを通じて、研究成果のフィードバックを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究実績は、交付申請書記載の「研究の目的」に即して行われ、「研究実施計画」を一つ一つ着実に遂行するかたちで進められたが、『徒然草』をめぐる総体的問題や「随筆」概念の再定義については、最終年度の研究と論集「中世の随筆」の編集を通じて、確定していきたいと考えており、その成果を以て、達成度を最終的に検証する必要があると考えている。そのため、三年目の自己点検しては、概ね順調に進展しているという評価が妥当であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
25年度の交付申請書や本実績報告書にも誌したように、26年に刊行される「中世の随筆」の編集(荒木の単独編集で、二十数名の執筆者を予定)と関連項目の執筆に向けて、準備を進め、その編集過程で、本研究課題の重要な問題が過半あきらかになると考えている。『徒然草』をめぐる起源と生成と享受の問題を考察し、その成果を一般に公表したり、レクチャーのかたちで発表したり、マスメディアなどにも提示しつつ、研究の進展を確認していきたい。ヨーロッパなど、海外でのワークショップも計画しており、それが達成されれば、さらにあらたな研究展開が予想される。
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