平成23年度は、池田小菊の文学活動を考察すべく、研究を進めた。 小菊の作品も掲載され同時代の文壇を知る上での重要な資料である『改造』(大正8年~昭和19年)のマイクロフィルム版を本研究費で購入した。刊行が完結したので、今後もこれを用いてさらに調査検討を進める予定である。 昭和16年ごろに書かれたと推定される「思はぬ旅」という草稿を翻刻し解説を付し、発表した(吉川仁子・弦巻克二「池田小菊未発表原稿「思はぬ旅」」『りずむ』創刊号2012年3月17p-51p)。この作品は、作品内に小菊が志賀のもとを始めて訪れた頃の回想を記した作品をさらに配する形を取っている。志賀の妻康子の印象や、教育実習生とのやり取りの中での志賀作品批判などが書かれ、志賀の奈良在住時の一面や、太平洋戦争直前の奈良の様子を窺う資料ともなり得る。 小菊の自筆原稿や、日記・雑記等の一次資料のうち11作品について画像データ化作業を進めた。また、小菊が戦後、奈良県婦人協議会の会長に就任し、その活動の中で発行した機関誌『婦人奈良』14冊も画像データ化した。『婦人奈良』は戦後民主主義出発期の地方女性を窺うことのできる貴重な資料でもあり、この23年度の作業をもとに、できればネットで公開する方向を探りたいと考えている。小菊が顧問を務めた全國書房についての調査にも取り組んでいるところである。 24年度は、全國書房についての調査を続行し戦中戦後の小菊の文学活動を明らかにするとともに、戦後の小菊の活動について、主に『婦人奈良』に重点をおいて精査する予定である。
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