1、平成22年度からタイ国に関連する日本近代文学のテキストの調査・収集を継続して行い、タイ国を描いた日本近代文学作品目録を作成した。本作品目録は日本文学研究だけではなく、日本・タイ国の文化研究、比較文学研究においても基礎資料となる。 2、1で調査・収集したタイ国を描いた日本近代文学作品目録に基づいて、日本文学に見られるタイ国のイメージ表象について分析した。歴史的に日タイ関係が緊密化した明治時代から現代に至るまでの日本近代文学作品の中で、明治期の南進論の時代から、昭和10年代の〈大東亜共栄圏〉の時代、高度成長期から、観光地として消費される現在まで、タイ国をめぐる文化表象が成立・流通していたことを明らかにした。本研究を通して、これまで東アジア地域に比べて、言及されることの少なかった日本文学に描かれたタイ表象という問題について、両国の歴史的関係性と照合しつつ明らかにした。 3、平成22~23年度に調査・収集したタイ国で刊行された図書・雑誌などの日本語資料を分析した。タイ国ナショナル・ライブラリー、タイ国公文書館で実施した調査結果をもとに、タイ国で刊行された日本語雑誌に見られるタイ国のイメージ表象について分析した。1で収集した文学テキストと比較・照合しつつ、文学テキストと同時代言説の関係性について考察し、成果発表を行った。 4、1~3の成果に基づき、科学研究費補助金と福岡市文学館の共催として、平成22年度から3年連続で文学講座を実施した。学術研究の成果を日本・タイ国の文学・文化や両国の国際交流に興味を持つ市民に公開する社会貢献活動を行った。
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