懐徳堂の助教であった五井蘭洲による古典の注釈書、例えば、 『古今通』や『勢語通』などを中心に、その和学の特徴、および学芸史上における意義について検討した。直接の影響を与えた契沖の注釈書、および地下歌人らの著作について考察し、従来、契沖から宣長へと一足飛びに論じられることの多い「上方学芸史」に、懐徳堂の和学、特に蘭洲の著作を加えることで、よりいっそう、その流れを具体に、精緻に把握することが可能になった。また、その結果、学芸史の埒外に置かれていた上田秋成の学芸について、再検討するべきことが、今後の課題として浮かび上がることになった。
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