研究目的は、ちりめん本「日本昔噺」シリーズ(英語版)の各作品につき、 1.典拠と翻案の実態をあきらかにすること 2.版次・版種の識別の研究の2点である。 1においては、ちりめん本「日本昔噺」シリーズの先行作品を網羅的に確認し、ちりめん本との対比を行い、出典と翻案の状況を明らかにする事を進めている。おおむね素朴な日本社会というよりは、近世文学や文化を呼吸した日本社会の都市文化が発信されていることを明らかにしている。愚鈍な出典研究の重要性がある。 2においては、曖昧に見える版表記の多いちりめん本テキストの実態把握が中心である。これまでの調査・研究で、版の表記として確認できたものは、再版、15版、16版、17版、18版の表記である。この内「再版」と表記しているものは、表記内容に矛盾を含んでおり(巻末の「日本昔噺」シリーズの広告との矛盾、出版者長谷川武次郎の住所の変遷との矛盾など)、明らかに信用できない。これらの中から異なりの版を見いだすのが研究課題である。このためにより多くのテキストの調査、収集、テキストの書誌情報の緻密な分析を進めている。また国会図書館への納本本調査分析(残念ながら納本本も災害等により多くのものが失われている)を進めている。また可能なものについてはテキストの版次集成のデータベース化を行っている。
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