研究課題/領域番号 |
22520189
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
市川 桃子 明海大学, 外国語学部, 教授 (20212996)
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研究分担者 |
劉 勲寧 明海大学, 外国語学部, 教授 (90261750)
三上 英司 山形大学, 地域教育文化学部, 教授 (30219597)
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キーワード | 江戸漢詩 / 日本漢詩 / 明治漢詩 / 杉浦梅潭 / 杉浦誠 / 函館奉行 |
研究概要 |
国文学資料館蔵の『梅潭詩鈔』浄書本を参考に、刊本におさめられている590余首の読解と分析を進めることが、今回の主要な目的の一つである。江戸から明治にかけて、知識人は、和歌及び俳句のような短型の詩では表現しきれない思想や感情を、漢詩によって表現した。したがって、当時の日本人にとって、漢詩は非常に重要な分野であった。現在では一般に人々が漢詩をそのまま読んで理解することが難しくなっている。従って、この激動の時代に人々がどのように感じて身を処してきたのかを知るために、この時代の漢詩の読解は重要な意味を持つ。本論はそうした研究の一端を担うものである。杉浦梅潭は幕府の旗本であり、幕末に幕府の官僚として活躍し、明治に入ってからは明治政府に官吏として勤めた。まさに幕末の激動期を役入の立場で体験した人物であり、その漢詩を読み解くことは、上記の意義に合致する。 今年度までに、すでに全体の四分の三の作品に訓読と訳注を付けた。浄書本に載せる圏点および批評を加えている。また、必要に応じ、杉浦家の協力を得て、作品に描かれている内容についての解説も加えている。形式は、各作品について「本文、訓読、日本語訳、語釈、解説、補遺、参考文献」を記している。解説及び補遺には、作品の時代的な背景、伝記的な背景、登場人物の解説、参考資料などをあげている。 日本漢詩の高い水準を海外に広く知らせることも、今回の目的の一つである。柳宗元と日本漢詩の関係についての論文を発表した。また、2012年度は中国で開催された国際李白学会に出席して、『梅潭詩鈔』および日本漢詩と李白の関係について、討論の席で述べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国文学資料館蔵の『梅潭詩鈔』浄書本を参考に、刊本におさめられている590余首の読解と分析という当初の目的のうち、すでに全体の四分の三の作品に訓読と訳注を付けた。また、海外での論文発表も行っている。
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今後の研究の推進方策 |
2012年度中に、『梅潭詩鈔』刊本の作品読解を終え、原稿の整理に入る予定である。2013年度には作品全体を分析し、杉浦梅潭及びそれを取り巻く幕府官僚(主に外交関係)を中心にした明治維新前後の知識人の交友関係を整理して、論文にする。また、杉浦梅潭たちが中心となった晩翠吟社と大沼沈山との関係についても、当時の様相を明らかにして、論文にしたい。以上を含めて、書籍として発表するための原稿を作る。
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