夏目漱石の中国・朝鮮(韓国)を中心とするアジア観およびヨーロッパ観については、中国・朝鮮(韓国)への漱石の視線の背景にぬぐいがたく存在する帝国主義・植民地主義的発想の存在をみる見解や、それと連関して、イギリスを中心とするヨーロッパに対する相対化が不十分であったとする見方が、ほぼ通説化していた。本研究は、漱石の作品・日記・書簡等を分析して通説とは異なる読みを提示するだけではなく、その読みを裏付けるために東北大学附属図書館の漱石文庫資料を調査して、新たな資料を加えて考察し、従来の見解の誤りを訂生して、漱石のアジア観、ヨーロッパ観について従来とは異なる展望をひらいた。
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