本課題研究では、うなづき構造の史的発展過程において現在の文楽の前段階に位置付けられる鉄砲ざしの操り方を検証し、文楽の高度な人形操作への発展過程について考察を行うことを目的とする。本研究で取り上げる事例は神奈川県の相模人形芝居五座(厚木市の長谷座・林座、小田原市の下中座、平塚市の前鳥座、南足柄市の足柄座)で伝承されてきた江戸系鉄砲ざしである。五座の古い伝承者への聞取調査、用具調査等の結果をもとに、今や消えようとしている鉄砲ざしの遣いを文字と映像によって資料化し、その資料をもとに文楽の遣い方と併せて考察することで、鉄砲ざしから文楽の操り方への発展過程の解明を目指す。 22年度~24年度においては聞取調査や用具等の関係資料調査を行い、その整理及び、江戸系鉄砲ざしのかしら・手足、衣装等の用具整備を行った。25年度は集大成として、それまでの調査成果と製作したかしら等を用いて相模人形芝居に伝わる江戸系鉄砲ざしの遣い方を再現し、映像に記録、資料化した(DVD、約20分)。映像の内容としては、江戸系鉄砲ざしのかしらの特徴、鉄砲ざしの構え、いくつかの演技の型、そしてそれを用いての一場面(絵本太功記十段目松ノ木登りの場面)の上演を、鉄砲ざしとそうでない場合とをできる限り比較しつつ撮影し、収録した。比較することによって江戸系鉄砲ざしの特徴が具体的に明確になったと思う。 制作した映像資料(DVD)は、相模人形芝居五座をはじめ、関係市町村の教育委員会及び図書館、研究機関等に配布した。
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