研究課題/領域番号 |
22520198
|
研究機関 | 二松學舍大學 |
研究代表者 |
山口 直孝 二松學舍大學, 文学部, 教授 (30297741)
|
キーワード | 新日本文学会 / 大西巨人 / 武井昭夫 / 湯地朝雄 / 花田清輝 / 『神聖喜劇』 / スカラベ-サクレ論争 / 政治と文学 |
研究概要 |
平成23年度は、前年度に引き続き、『新日本文学』の本誌・関連紙誌の収集をまず行った。とくに、『新日本文学会ニュース』・『新日本文学会会員ニュース』・『文学新聞』など、会員向けに刊行された新聞類の収集に力を注いだ。図書館などにほとんど所蔵されていないため、通覧は難しいが、日本近代文学館・神奈川近代文学館・現代詩歌文学館所蔵のもの、あるいは個人所蔵のものを閲覧し、加えて古書市場に流通しているものを購入することで、ある程度集積することができた。それらを基に、順次細目を作ることを始めている。本誌『新日本文学』についても、1950年代~1960年代の細目作りを進めている。 関係者の聞き書きについては、大西巨人・湯地朝雄・玉井五一・武井美子の四氏に話をうかがうことができた。新日本文学会に関する話はもちろんのこと、現代芸術の会や綜合文化協会、あるいは戦後の学生運動に関する証言を得られた。当事者の言葉により、当時の芸術運動の連続性・複層性は、より明確に理解することが可能となった。このうち、大西巨人氏のものについては、13に記したように、「大西巨人氏に聞く-『神聖喜劇』をめぐって」ほかで順次まとめ、公表している。湯地氏・玉井氏のものについても、文書化の作業は進んでいるので、順次発表する予定である。 大西巨人研究については、書誌・年譜を作成中。小説・エッセイ・インタビューの初出はほぼ確認し、収集を終えたので、データの集積化を図りたい。冊子化、さらにはホームページでの公開を目指す。 文学論争については、スカラベ-サクレ論争について、年表を作成した。それを踏まえた論考を準備中である。論争当事者であった武井昭夫の批評が持つ歴史的意義については、「「無名」への意志-武井昭夫『創造としての革命』論」で考察を行った。これは、資本主義の「倫理」に対して、革命の「規律」を掲げた武井の運動理論の同時代における卓越性を指摘したものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新日本文学会が刊行していた書籍・雑誌・新聞類が支部のものを含めると予想以上に多かったこと、また、その収集が必ずしも容易ではないこと、聞き書きの作業が話題の広がりに伴って、当初計画よりも継続する必要が生じたことなどから、扱う対象が増えたことはあるものの、データの蓄積は着実に進んでおり、目標を達成することは可能であると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
新日本文学会の刊行した紙誌で未見のものの収集を行いながら、『新日本文学』・『新日本文学会ニュース』などの細目の完成を目指す。なお、福岡支部より発行されていた『福岡文学』の調査のため、福岡市総合図書館への出張調査を予定している。聞き書きについては、大西巨人氏・湯地朝雄氏・玉井五一氏へのインタビューを継続すると共に、文書化を順次行う。大西巨人の年譜・書誌を作成を続け、完成を目指す。スカラベ-サクレ論争の考察をまとめ、さらには、武井昭夫・湯地朝雄の批評の意義についても論じる予定である。年度前半にデータ化の作業は終え、後半は執筆作業に集中することにしたい。
|