新日本文学会を中心とする戦後の文学芸術運動の歴史は、概要のみが知られており、会の活動や刊行物の詳細は、明らかでないことも多い。そのため、本研究では、新日本文学会や周辺の運動団体の刊行物を収集し、細目を作成すること、また、当事者にインタビューを行い、証言を記録することの二つを柱にして研究を進めてきた。 2012年度は、大西巨人・湯地朝雄・玉井五一の三氏にインタビューを行った。このうち、大西氏・玉井氏のインタビューは、注記を施した形で発表することができた。ただし、大西氏・玉井氏のインタビューも分量の問題で公けにできていない部分が残されており、湯地氏の分を含めて、今後順次まとめていく予定である。また、大西氏・湯地氏の分泌活動について、論考をまとめることができた。 刊行物の収集については、『現代詩』・『美術批評』・『現在』・『記録芸術の会会報』・『映画批評』・『テレビドラマ』・『大阪労演パンフレット』などを対象とした。それぞれの雑誌ごとのデータを記録すると同時に、大西巨人・玉井五一・湯地朝雄・武井昭夫ら芸術運動に関わった文学者の個人書誌を編む作業も並行して行った。玉井五一・湯地朝雄の書誌については、近日中に公表する予定である。 インタビューと雑誌細目作成とを通じて、新日本文学会を中心とした文学・芸術の運動体がさまざまな思想・立場の人間の集合体であり、多層をなしていること、一つの運動体の内部においても葛藤があり、運動の質が変化していくことを、より具体的に把握することができた。
|