研究課題/領域番号 |
22520199
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研究機関 | 二松學舍大學 |
研究代表者 |
磯 水絵 二松學舍大學, 文学部, 教授 (60130407)
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キーワード | 四天王寺精霊会 / 仁王会 / 引聾阿弥陀経会 / 六道まいり / 万灯会 / 臼杵石仏 / 宇佐八幡宮 / 熱田神宮 |
研究概要 |
前年2月の高野山金剛峯寺の常楽会見学において、すでに四座講式の形を示す現行の常楽会を追っていたのでは中古以前の形を知る手がかりにはならないことを知り、本年度は、広く涅槃会の様式を追い、さらには、涅槃・常楽会にとらわれずに古い様式を示すと推察される法会、さらには古い信仰の跡を追う方向に軌道を修正した。 そして、4月には四天王寺精霊会に伺い、9月には大阪国立文楽劇場において、折りしも天台宗真正極楽寺真如堂の引聲阿弥陀経会・真言宗醍醐寺の仁王会が公演されるというので、その見学に伺った。本務のために行事そのものへ伺うことは難しいから、それはよい機会であった。 また、前年に購入した参考資料を渉猟する傍ら、8月には仁王会公演を見学した醍醐寺に伺い、京都の盆行事である、六道まいりを六道珍皇寺・万灯会を六波羅蜜寺等に調査したが、現在に残る信仰の跡は確認されても、やはり、古い法会の形式を伺う材料には乏しかった。 そんな中で、特に興味深かったのは、3月の臼杵石仏・宇佐八幡宮周辺の調査で、各所に認められる像や、石仏群に中央とは異なる信仰形態が認められて、あるいは、こちらの方に法会の原初形態の名残が垣間見られるかと期待された。本年度は、昨年来目論んでいた熱田神宮の調査は叶わなかったが、福岡太宰府の調査に続けて行なった大分県の調査が注目され、引き続き、この方面へのアプローチが重要に考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
所謂、興福寺文書に古い記載はなく、しかも、各所の常楽会はすでに院政期以降の儀式様式が定着しており、行事自体に古式を読み取ることができないことがその原因である。『教訓抄』・『古今著聞集』といった作品にはその古式が垣間見られるにもかかわらず、現行のそれには片鱗が見当たらない。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの調査で、九州北部(国東半島)の信仰・祭の形態に古式が見られるように推察している。そこで、本年はそこの調査を再び試みると共に、常楽会後朝の法華会と熱田神宮の関係調査に力を入れたい。そこで、当初は奈良周辺に拠点を置いた調査を想定していたが、調査地域を大きく変更することになった。もちろん、奈良周辺調査を視野に入れないというわけではないが、信仰の進路を、今は九州地方から辿ってみたく考えている。
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