研究課題/領域番号 |
22520206
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研究機関 | 朝日大学 |
研究代表者 |
米田 真理 朝日大学, 経営学部, 准教授 (20398358)
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研究分担者 |
飯塚 恵理人 椙山女学園大学, 文化情報学部, 教授 (00232132)
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キーワード | 能楽 / 日本芸能史 / 芸能興行 / 東海地方 / 地方史 |
研究概要 |
本年度は、調査拠点となる地域のうち愛知県名古屋市、愛知県豊橋市、三重県桑名市に関する文献資料の複写と収集、ならびに地域の方へのインタビューを行った。 まず、名古屋市に関しては、大鼓方大倉流覧鉱一氏所蔵の、戦前の名古屋能楽堂(布池能楽堂)に関する資料について複写(写真撮影)と聞き取り調査を行った。本調査により、戦前の名古屋における能楽興行の実態について重要な知見を得た。 豊橋市に関しては、明治時代以来、地域住民による演能が行われていた魚町伝来の狂言伝書資料について、前年度に引き続き書誌等の調査を行った。また、伝書所載の人名について整理し、江戸時代に吉田藩士や町人の間で用いられていた台本が、明治期以降、魚町住人に引き継がれ保存されてきた様相が明らかになった。この成果は、『名古屋芸能文化』第21号に論考を発表した。 桑名市に関しては、昨年度に引き続き、明治維新直後に行われた能楽興行について文献資料の調査を行った。この成果は、芸能史研究会3月例会にて口頭発表を行った。また、江戸時代後期、桑名の東照宮別当であった佛眼院にて行われた興行について、桑名藩の管理下にあった大坂川崎東照宮および藩主の移封先である忍藩の資料をもとに考察し、『桑名市博物館紀要』第10号に論考を発表した。 さらに、調査の過程で見出せた成果として、近年まで名古屋や岐阜で弟子の指導を行っていた、大阪のシテ方観世流下田雄三氏旧蔵書に関する調査の機会を得た。これは、下田氏の父・益三氏のコレクションで、明治末期から大正にかけての能楽の様相が知られる、貴重な資料であった。これについては『朝日大学経営論集』第26巻に論考を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査の対象としていた地域については、写真撮影や書誌調査など、当初の目的を達成することができた。 また、各地域に関する論考を発表することができ、当該地域の能楽興行に関する新知見を提供することができたと考えられる。ただ、ホームページ上での目録や写真の公開に関しては、所蔵者の意向もあり、申請書の通りに行うことができなかった。今後、慎重に意見の擦り合わせを行った上で、順次進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、前年度の調査から派生した、岐阜県大垣市における明治初期までの能楽興行に関する問題について、調査を進めていきたい。具体的には、大垣市立図書館所蔵の地域資料を中心に、当地の祭礼や地域産業(水運業・陸運業)と能楽の関わり、さらには京都や名古屋の能役者との交流について調査し、地域に密着した能楽興行の実態について明らかにしたい。
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