研究課題/領域番号 |
22520207
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研究機関 | 岐阜聖徳学園大学 |
研究代表者 |
安田 徳子 岐阜聖徳学園大学, 教育学部, 教授 (00135279)
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キーワード | 地芝居 / 大芝居 / 中小芝居 / 旅芝居 / 浄瑠璃本 / 歌舞伎台帳 / 歌舞伎台本 / 旅役者 |
研究概要 |
初年度と本年度に収集した香川県小豆島の肥土山歌舞伎・中山歌舞伎、山形県鶴岡市の山五十川歌舞伎、群馬県渋川市の上三原田、愛知県扶桑町中村七賀十郎旧蔵の資料、岐阜県中津川市中仙道歴史資料館管理資料、岐阜県各務原市歴史民俗資料館蔵中の台本・浄瑠璃本の写真による整理によって、江戸期の地芝居の古台本は浄瑠璃本から作られたと見られる台本が多く、地芝居と浄瑠璃の深い関係が窺われる。明治以降の台本はほとんど旅芝居台本で、振付師となった旅役者の芸系が地芝居に伝えられた跡が明瞭で、大芝居から旅芝居、地芝居へ継承された足跡を辿ることができ、大芝居が失った作品の残存も確認できた。 大阪から近い瀬戸内は上方役者が移住して台本と振付をもたらした。北の日本海側の地は、北前船によってやって来た役者によって台本と振付がもたらされた。いずれも上方の中小芝居を継承していることが明らかとなった。中部地域は東西文化の交叉する所であり、また地方芝居の拠点であった名古屋の影響下にあり、調査台本から見ても上方芝居の影響の強さが窺われるが、江戸末期以降は江戸芝居の影響も見られ、東西芝居を取り込んだ旅芝居の独自の形態を読みとることができる。 架蔵の下川路村(長野県飯田市川路)旧蔵台本6点はいずれも上方大芝居台帳、その隣村の下條村では大芝居台帳と上演時の多色摺番付の版木、上演時の花帳が発見され、大芝居台帳による芝居がこの地で地役者や村人によって上演されていたことが明らかとなった。浄瑠璃本や旅芝居を介した芝居という地芝居の通例とは異なる大芝居を直接取り込んだ芝居が伊那の山村で上演されていたということは、この地域の特殊性であるが、大芝居と地芝居の交渉を考える大きな糸口となろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ予定通り進行しているが、調査先の資料が未整理のため、整理しながらの調査であったり、本研究の進行中に新たな資料が発見されたりして、調査の優先順位や調査地を変更する必要が生じているが、地芝居の台帳の使用や多色摺番付の存在などの新たな発見もあり、地芝居の興味深い実態、大芝居との関係が見えてきている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は最終年度であり、調査の終了していない資料の調査を完了させ、収集した資料の分析を研究の中心とする。 1,調査資料の記載と調査地域の地誌・地方史を利用して、資料の伝来の経緯を明らかにする。 2,調査台本相互の比較と大芝居演目との比較を行い、地芝居の地域的特色を明らかにする。 3,地芝居台本中からいくつかの作品を取り上げて、大芝居台本と比較し、台本の変遷を追跡する。 これらの分析結果から、地芝居と大芝居の関係を考察する。また、歌舞伎研究における地芝居残存台本の意義を明らかにする。
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