本年度は、資料の収集を引き続き行うとともに、『河海抄』データベースの完成・拡充に力を注いだ。形式・分類についてはさまざまな試行錯誤を重ね、いまだ検討の余地があるものの、今後の研究にもっとも資する形を考え、実用を旨として次のような形式に落ち着くこととなり、一応の完成をみた。 まず、『河海抄』中から「濫觴」(行事、事物などがどのような濫觴を持つかについての注)、「人名」(実在人物、架空の人物を含め注に中に現れる人物名)、用字(『源氏物語』中の和語にどのような漢字を当てるかの注、「日本紀」などの注記付きの場合はその出典をも掲載する)、「和歌」(引歌を中心とする和歌の引用)、「漢籍」(漢籍の引用)を抽出した。これらの分類は重なることもあり、その場合は二つの分類に重複してデータを記載する。以上のように『河海抄』の内容を研究代表者自身が分類した上で、「巻」、「角川書店版のページ」、「被注項目」、「出典」、「分類」、「和歌、漢籍本文 漢字のよみかた」、「漢字、備考」の項目を作って、エクセルに打ち込んだ。 現在、このデータベースは発表の方法を模索中であり、研究期間内の発表はできなかったが、2013年度中には紀要などに発表の場を得て公に供したい。ネット上での発表も有効であろうと思われるので、その方法も検討している。 『河海抄』の特色として、多くの行事などの濫觴を述べるように、『源氏物語』読解とは直接の関係を持たない類書的な性格があることを指摘できる。現在、論文を準備中である。 また、当初の予定を若干変更して、中世の学問と文学の関係を考えるために、また中世における漢籍の需要の実態を明らかにするために、鎌倉時代の医事説話集『医談抄』の研究も並行して行った。
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