平成23年度は、平成22年度に予定した(1)伝本の蒐集、及び、データベース化すべき伝本の選別、(2)諸本論の構築、(3)翻刻データの作成、をほぼ終えることが出来た。現在各伝本とも、点検作業中で、初校(8本)、再校(5本)の段階であり、24年度中には、本文集成が完成できる見込みである。 (1)の作業の一環として、国文学研究資料館にマイクロフィルムとして収蔵されているものの、原本の所在が不明となっていた三本(榊原家旧蔵本、田林義信氏蔵本、岡田真旧蔵本)について、調査を行い、うち二本については、所在及び現所蔵者を特定することができた。また、事情により本文の公開が許可されない伝本(桃園文庫藏阿波国文庫旧蔵本}についても、閲覧調査を行い、その系統や本文の特性について見通しを示すことが可能になった。これらについては、23年度の成果報告書(『古今和歌六帖研究II』、平成23年3月31日発行)に調査報告を掲載した。 また、今回本文集成に採用しなかった写本群についても、伝本調査は完了している。その上で、(2)の作業として、写本群を系統立て、各系統の特性等に関する論考を23年度成果報告書に掲載した。24年度以降は、本文集成の成果を参考にしつつ、逸文の蒐集や、異文の分析に入る予定であるが、その準備として、現在確認されている古今和歌六帖の古筆切の一覧をまとめ、これも成果報告書に掲載した。 なお、研究計画の段階でめざしていた、連携研究者が専攻する時代における古今六帖の享受状況を検討し、それに基づく論考の作成は、データベース作成の作業に予想外に時間を要したため、全員の執筆は叶わなかった。しかし、古今和歌六帖の広本、あるいは異本が存在したとの旧説の実否を確認し、伝本研究の基礎を固めるため、とりあえず、夫木抄との関連について考察した。この成果は、本年度中に公刊の予定である。
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