平成25年度は、本科研最終年度であり、調査した資料のデータベースに基づき、古今和歌六帖校本データの作成に一年を充てた。すでに室町末期から近世初期にかけての写本群を精査し、系統を分かつ作業は終了しているので、写本群の中から校本データとして使用すべき伝本を選択、これに近世の版本をあわせ、13本をデータベースに使用することが決定していた。これらの伝本の本文のデータベース化は、平成24年度までに完了していたので、これらを校本の形にするとともに、原本との最終的な照合に時間を費やした。それは、主として、各伝本に注記された傍書、異本注記の確認である。傍書、異本注記等の書き入れは、文字情報だけではなく、その位置情報が極めて重要であるため、この点に細心の注意を払った。データベースの最終的な調整に際しては、システムを構築できる専門家に依頼をし、最終的にはPDFデータとして、電子媒体による公開をした。 古今和歌六帖の伝本と享受に関する論文は、伝本研究に関しては、平成22年度、23年度に公刊した『古今和歌六帖研究』I、IIに掲載するとともに、他の学術誌上でも公表したが、今回の最終的な成果報告の中に、略解題として使用した13本について解説を付している。享受に関する研究は、すでに連携研究者が各自の専門とする時代、領域において行っている。 最終的な校本データが完成した時点で、平安中期・末期の歌学、及び、近世の和歌研究に関わる問題点が明らかになった。校本データを活用することにより明確になる問題も多々あることが予想されるが、これらはなお今後の課題としたい。
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