研究実績の第1は、『近世実録翻刻集』(高橋敬一・山本卓編、平成25年2月22日」大阪大谷大学文学部高橋圭一研究室発行)の公表である。同書は、藤沢毅氏『厭太平楽記』・菊池庸介氏『田宮物語』・岡田哲氏『白川根笹雪』・高橋圭一氏『享保太平記』・山本卓「都の錦『播磨椙原』新出本」の翻刻集である。いずれも未翻刻の実録の翻刻であり、その意義は高い。 すなわち、実録は写本で伝播したものであり、翻刻集が非常に少ない。昭和初年の『近世実録全書』までさかのぼらねばならない。しかし、その必要性は非常に高いのである。その欠を補う一書である。 また、今年度は、ハードウエアーの経年劣化による破損のため、前科研「実録体小説の基礎的研究=データベース『実録所在目録 附録 実録目次一覧』構築・公開に向けて」(研究課題番号16520120)で、プロト的に試作した、データの入力・編集・閲覧ソフトが利用不可能となった。そのため、新たな諸本調査は実施せず、これまで蓄積してきた鳥取県立博物館中島家文書や関西大学図書館(一般図書)などの実録本調査データを、前科研「実録の基礎的研究」で集積した関西大学図書館中村幸彦文庫や国立国会図書館・国文学研究資料館など各地の図書館・文書館の調査データと併呑・整理・総合して、DVD版として編集・作成し、「データベース『実録所在目録・目次』」(DVD版)として発行の準備をした。同DVDは本年5月10日に公開予定である。
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