(1)『続教訓抄』『體源鈔』の伝本研究 それぞれの伝本の収集・調査を進め、重要伝本については紙焼き写真等を購入した。 (2) 楽書生成に関する研究 南都の楽人狛氏周辺での楽書生成の研究の一環として、未紹介の楽書『竹舞眼集』について検討し、この楽書が正統な伝承を後代に伝える目的で狛氏嫡流の者によって編まれ、扶助を求めて得られずにいた興福寺に対しての主張をも含むものであると考えた。 (3) 楽書断簡の研究 春日大社寄託の鎌倉期書写の楽書断簡二葉が「春日楽書」と称される楽書の一部であることを明らかにした。同時に、江戸期の「春日楽書」書写の経緯や「春日楽書」中の楽書の復元案を提示した。欠失箇所が出現したこととあわせ、現在進展しつつある「春日楽書」研究に資するものといえる。 (4) 天野山金剛寺蔵音楽資料の研究 大阪府河内長野市の古刹天野山金剛寺に蔵される典籍のうち、南北朝期から江戸期に成立した音楽資料『諸打物譜』〔琵琶秘抄〕等の紹介、検討を行った。それらの資料には、これまで知られていなかった『順次往生講式』の本文や、楽器に関わる説話などが記されており、いずれも日本音楽史上重要な価値を有するものといえる。 (5) 研究会の開催 研究の進捗状況の報告と情報交換のため、外部の研究者を招き、2010年8月7日、2011年2月18日の2回研究会を開催し、研究報告をするとともに、意見交換等を行った。
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