江戸時代の大阪の漢学塾「懐徳堂」関係者は盛んに旅行し、多くの紀行を残した。それらの資料に含まれる客観情報は歴史学、地理学にとって貴重な史料である。また、それらの資料の記述内容は、彼らの表現技法・思想を分析する上でも重要な資料である。本研究は、それらの資料の中、漢文で書かれた資料を中心に調査・報告する。 本研究の1年目に当たる22年度は、全面的な資料調査を行った。懐徳堂関係者の紀行関係資料は、大阪大学付属図書館懐徳堂文庫および大阪府立中之島図書館に多く所蔵されている。筆者はこの二図書館に所蔵されている資料を調査し、懐徳堂関係者の主な訪問地である吉野、有馬、琵琶湖、江戸に関する資料の収集を行った。その他、国立国会図書館、慶応大学、西尾市岩瀬文庫などに散在している懐徳堂学派の旅行関係資料を収集し、テキストの校勘を行った。 さらに、吉野、琵琶湖の現地調査を行い、『芳山紀行』『環湖帖』の訪問地の現況を確認した。現地調査により、古今の変化、彼らの場所の選定の特徴を確認することができた。その成果の一部は、「『環湖帖』の旅を訪ねる」(『懐徳堂研究』2号、2011年2月)で公表した。
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